海で生まれたアプロディテが最初に上陸したのはキプロス島のパポスという街だった。
パポスの街とアプロディテの神殿を作ったのはパポス王キニュラスだった。彼女の妃ケンクレイスはスミュルナという絶世の美女を産み落とした。そして王はその美しさを誇るあまり「私の娘はアプロディテよりも美しい」と言いふらした。それを知ったアプロディテ は憤慨し、ケンクレイスを罰するためその愛娘スミュルナに父への恋愛感情を抱かせたのだ。
父への思いに苦悩し、自殺未遂をしたスミュルナの乳母は、彼女を助けるため「王に死ぬほど恋い焦がれている美しいご婦がいます。寝室を真っ暗にしていただけるのなら、夜毎その美女を貴方の寝室へ連れてきましょう」と申し出た。キニュラスの答えは勿論イエスだ。
それから十二日間、王と娘は夜を共にしたのだ。しかし最後の夜、キニュラスは相手の顔を一目見たいと部屋の明かりをつけてしまい、そこで全てを知った。
驚きと怒りのあまり王は娘を殺そうとする。スミュルナは間一髪逃げ、長い放浪の末アラビアの南にたどり着く。彼女はそこで神に祈り、没薬の樹に姿を変えた。没薬の樹から流れ出る良い香りのする樹液は、スミュルナの涙だと言われている。
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